割のいい副業のハズが…。英語を生かした在宅ワークで大失敗
割のいい副業のハズが…。英語を生かした在宅ワークで大失敗
在宅歴3年で、ライターや編集をしているaiaiです。
ごくたまに、副業的に英訳原稿チェックの仕事をいただくことがあります。英訳がしっかりしているので、私はざっと見る程度。それでも、普段のライティングとは異なる独特の緊張感が漂います。私には、そんな英語に関する仕事のなかで、今でも忘れることのできない案件があるのです。
おいしい副業GETのチャンス
私は特に英語が得意というわけではありません。しかし、英語英文学科出身ということ、わずかの間ですが、高校で英語科非常勤講師をしていたという経歴から、英語に関わる仕事をご依頼いただくことがあります。
以前から、ときどきご依頼いただく案件のひとつが、英訳原稿のチェック。たとえば、観光案内パンフレットの英語版を作るとき、日本在住歴の長い外国人スタッフが英訳原稿を作るのですが、その英文のニュアンスが、元の日本語原稿からズレていないかをチェックする仕事です。
英訳を担当する外国人スタッフが、日本在住歴30年以上という方なので、いつもほとんど修正なし。ごくたまに、ちょっとした勘違いがあるのを指摘する程度ですが、英語を使うからか、意外と単価が高いのが魅力的です。もちろん、英語の勉強になるという点も気に入っています。
ライター業の方で、ある専門学校の先生にインタビューする機会がありました。その先生には、以前お世話になったことがあり、もともとの知り合い。そのため、インタビュー後にお茶を飲みに行くことになりました。
近況をあれこれ話しているときのこと。先生から「今は英語を使ってないの?」と聞かれたので、「英訳原稿のチェックをするくらいですね」と軽く答えたのです。すると「だよね?英語、使ってるんだよね?」と食いつく先生。何だ…?
実は先生は近々、県内きっての観光地で、フレンチレストランを開業することになっているのだとか。そこで、店で使うメニュー表の英訳版を作ってほしいというのです。提示されたギャラが破格だったこと、仕事に掛かる前に、店で出すコース料理を食べさせてくれること、メニュー改定の際も都度発注してくれること…。どう考えてもおいしい仕事だ!
その場でお引き受けすることにしました。
一体どんな料理なのか?…イメージできません!
次の日の夜、さっそくご招待いただき、コース料理をごちそうになりました。外観や内装の雰囲気から、予想していたより高級なお店であることがうかがえます。先生のキャラクターから、勝手にビストロ風のカジュアルなお店を想像していた私。
ヤバイ…。こんな高級店のメニューなんて、日本語でもよくわからないかもしれない。
料理はどれも素晴らしくおいしく、大満足。しかし、こんなに堪能したからには、いい仕事をしなければならないと、若干のプレッシャーも感じていました。
自宅に帰り、受け取ってきた日本語のメニュー表に、ざっと目を通してみたのですが、やはり難しい…。「○○の△△風◎◎◎◎を添えて」とか、「〇〇と△△のデュオ◎◎◎◎とともに」など、フランス料理特有の言い回しにやられて、どんな料理なのかイメージがわかないのです。
そもそも、日本語に書かれているとおりに直訳してもよいものなのか?少し意訳するものなのか?メニュー表に関する専門知識がないので、常識というものがわかりません。
おかしなことをすると、お店が笑いものになってしまうので、自分なりに料理の専門誌を調べたり、料理の具体的な内容を先生に質問したり。手掛かりを集め、どうにか英訳していくものの自信がなさ過ぎる…。
観光地の玄関口にあたる立地、素晴らしい料理、それを楽しみに来るたくさんの人々。
それらを私が作ったポンコツな英訳メニューが、ジャマしてしまう気がして仕方ありません。
自分自身がおいしい料理を堪能しただけに、余計に追い詰められる気分。もう、逃げ出してしまいたい心境でした。
困った、外国人にまったく伝わらない…
あまりにも自分の英訳に自信がなかったため、私は先生に納品する前に、外国人に見てもらうことにしました。
いつもお世話になっている、例の日本在住歴30余年のスタッフの出番です。いろいろな仕事を経験してきた彼は、確か外国人がよく訪れるレストランの厨房でアルバイトをしていたことがあるはず。さっそく事情を説明して原稿を持参し、チェックを依頼したのです。
ひと通り目を通した彼は、険しい顔つきで「aiaiサン、コレハ、ゼンゼンイミガワカリマセン!ソノママ、エイゴニスルダケジャダメ。イミヲヨクカンガエナキャ、ダメヨ(aiaiさん、これは、全然意味がわかりません!そのまま、英語にするだけじゃだめ。意味をよく考えなきゃ、だめよ)」……ですよね~。
ついに使ってしまった禁じ手
しかし、約束した納期まであと2日。メニューの数は、20種類以上。しかも、ここまで悪戦苦闘してきてこの出来なので、今の英訳以上のものができるとは思えません。
チェックもお願いしたいので、その分の時間を考えると、今からやり直すのはとても無理。お店のオープン日が近く、納期を遅らせるわけにはいきません。
追い詰められて泣きそうな私は、そこでついに禁断の一言を放ってしまったのです。
「David、お願い!このメニューの英訳、引き取って!」(Davidというのは、そのスタッフの名前です)
もともと、私が受け取ることになっていたギャラに、特急料金分を自腹で上乗せした額を支払うと話した結果、Davidはその仕事を快く引き受けてくれました。いつもとは全然違うギャラの金額に、彼は大喜び。私は、といえば金銭的にはそれまで作業してきた分と、自腹を切った上乗せ分の損失です。それでも、これから華々しくオープンするステキなフレンチレストランに、外国人に伝わらない英訳メニューが並ばなくて、本当によかったと胸を撫で下ろしたのでした。
英語の世界は甘くないことを痛感
今まで英語に触れる機会が多かったからか、何となく英語ができる気になっていた私。しかし、ある程度業界知識や専門性が必要な場面では、まったく役に立たないことを痛感しました。
今でも、人が英訳したものをチェックする仕事はしていますが、自分が英訳を担当することは、金輪際止めておくつもり。せいぜい、子どもの宿題の英作文を教えるときくらいにしておこうと思います。