在宅WEBライター事件簿<1.自宅に届いたモノの正体は…>
在宅WEBライター事件簿<1.自宅に届いたモノの正体は…>
在宅歴3年で、ライターや編集をしているaiaiです。在宅で仕事をしていると、ときどき思いがけない出来事が発生しますね。今回は、私が遭遇したそんな事件をひとつご紹介します。
自宅に届いた大きな段ボール
3年ほど前の夏の休日、わが家に荷物が届きました。立っている私の腰まであるような大きな段ボール。軽いのですが、大きいだけあってリビングに運ぶのにとても苦労しました。送り主の名前に心当たりはなかったのですが、「ネットで何か買ったんだっけ?」と、特に深く考えずに開けてみることに。というのも、その頃私は、アパレル関係の通販サイトで商品紹介のライティングの仕事をしていました。その参考になればと、よくネット通販で買い物をしていたのです。段ボールに付いていた送付状の内容物が「衣類」となっていたこともあって、気軽に開けてみたところ…。
中から出てきたのは、袋に入った大量の商品。布製のものだというのはわかるものの、何だ…?まったく心当たりがありません。一つひとつ袋から出してみると、それらはすべてランジェリー。しかも、かなりきわどいデザインのものでした。
リビングで荷物を広げたため、そばで見ていた夫や息子。次々と出てくるやたらセクシーなランジェリーに仰天して「お母さん、これ買ったの?お母さんが着るの?」「何の目的で買ったん?こんなちっちゃい下着、体が入らんやろ?」とふたりで大騒ぎ。さらには「ここに穴が開いているのはなんで?」とか「スースーして寒そう」「これだと上から服は着られないな」など、分析を始める始末です。
私は私で「なんで大量のセクシーランジェリーが私宛に?」「このショーツ、何で前にファスナーが付いてるんだ?」と大量の「?」が頭の中で炸裂しています。
もしかして詐欺かもしれないとか、送り主に返品したらいいのか、などと考えながら過ごしていたその夜、メールが届きました。「資料として商品サンプルを送りました。執筆を開始してください」。執筆依頼のようでしたが、メールの主にもまた心当たりがなかったので、ほかのライターさんと間違ったのだろうと、その旨を返信しました。
ランジェリーショップの仕事が舞い込む
次の日、いつものアパレル通販サイトの担当者から連絡があり、前夜のメールの送り主はグループ会社であるランジェリー部門の担当者だと判明しました。そういえば…とよみがえる1ヵ月ほど前の記憶。アパレル通販サイトの担当者から、「今度ランジェリー部門のWEBショップが立ち上がるから、そこのライティングも依頼するかも」と聞いていたのでした。
よく確認してみると、やはりそのときに聞いていたランジェリーショップの商品とのこと。担当者間の連携ができていなかったようで、私に正式な発注がくる前に、資料として商品が届いたということでした。
それにしても、最初に聞いたときには確か商品のテイストとして「基本、可愛いデザインで少しセクシー寄りのランジェリー」と聞いていたような。そして「aiaiさんにぴったりの内容だと思いますよ」とも。そのため「セクシー寄りのランジェリー」に縁のない私は、その話を聞いてからしばらくは、近所のショップに出向き、Tバックやガーターベルトなどを中心にあれこれ商品を見るようにしていました。
しかし、目の前にあるランジェリーたちは、どこから見ても「セクシー寄り」というよりは「セクシーど真ん中」。下着でありながら、ブラもショーツも一切どこも隠す気のないデザインです。最も隠していただきたい部分に、むしろ切れ込みや透ける素材が入っている…。キャミソールもスケスケで、まるで裸に薄手のガーゼをまとっているよう。セクシー寄りのランジェリーと聞いて、Tバックやらガーターベルトを思い浮かべていた自分の限界を思い知ったのでした。
未知との遭遇に表現を模索する日々
送ってくださった商品はサンプル品で、返品不要。担当者から「ぜひ試しに身に着けて、原稿に落とし込んでください」と言われていたので、家族が不在の間にこっそり着てみることにしました。
が…。やはりセクシーランジェリーは、美しいプロポーションがあってこそ。私が身に着けると、セクシーさを強調するキワドイ切れ込みからは肉塊がポロンポロンとこぼれ出し、スケスケのキャミソール越しに見えるのは、寸胴で緊張感のないポッチャリ幼児のようなボディ。デザイナーさんの意図をまるで無視したコメディタッチな仕上がりで、まったく参考になりませんでした。
何とか書き始めたものの普段の自分の文章スタイルや、アパレル通販サイトで書いていたようなテイストのコピーだと、どうしても違和感があるんですよね。商品の迫力にコピーが負けてしまうような、もっと言えば、いかにも普通の主婦が、頑張って書いています感が漂っているように感じました。
3商品分を書いたところで、違和感が消えなかった私は、担当者に相談。担当者からは今回のようなガッツリとセクシーなランジェリー通販の場合、パートナーとふたりで商品を選ぶ場合が多いこと、若いカップルだけでなく、年齢層が高いカップルも少なくないこと、撮影用に購入するカメラマンもいることなどを教えてもらいました。「ご主人に見てもらってもいいかもしれませんよ」というアドバイスとともに。
アドバイスに従い、その夜、機嫌よくテレビを見ている夫の目の前に魅惑のセクシーランジェリーたちを再び公開。一緒に考えてもらったところ、「ここのデザインがそそられる」「こういう女子に身に着けてほしい」「こういうカップルにおすすめ」など、新たな切り口が出てきました。さらに男性情報誌やファッションサイトなどを参考に、表現をブラッシュアップし、何とか納品にこぎつけることができたのです。
家族の協力のありがたさを実感
今回のセクシーランジェリーショップの仕事では、家族の協力のありがたさが身に沁みました。あんなセクシーなものが自宅に届いたら、年頃の子どもなら動揺してしまうかもしれませんが、散々面白がったあとは意外にもスルーしてくれたこと。そして、夫にいたっては、男性視点から的確なアドバイスをくれたことには、本当に感謝しています。
それにしても、最初のアパレル通販サイトの担当者は、何をもって「aiaiさんにぴったりの内容」だと思ったのでしょう…。